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坂戸パソボラ2000年レポート

全国障害者問題研究会(全障研)34回全国大会
「パソコン・情報アクセス分科会」発表レポート

2000年7月29日 登録


坂戸パソボラその後の1年と今後の課題

坂戸パソコンボランティア 岩渕正樹 

 昨年レポートした「坂戸パソコンボランティア」の追跡レポートです。果たして、昨年課題だったことはクリアされたでしょうか。新たな課題は無いのでしょうか。また、坂戸パソコンボランティアの参加者が伸びているのは何ゆえでしょうか。地域のボランティアグループとのかかわりの中から考えてみたいと思います。

 最初に、昨年のレポートで「坂戸パソボラ今後の課題」と記したことがどのように進展したか、進展しなかったかを述べたいと思います(去年のレポート部分は短くし、かつ言葉を補ってあります)

1.最初に集まった10数人中のほとんどがパソボラが初めてのボランティアの場ということもあるのか、ボランティアの現場に足を踏み入れることへの躊躇があるようです。いったん現場に入れば現場が教え現場が鍛えてくれるものですが、その一歩がなかなか踏み出せないでいます。

 と、去年のレポートで書きました。この傾向は残念ながらまだあります。中には足が遠のいている人もいます。でも、その後に入会した数10名の中に、既に地域のボランティアグループで鍛えられてきた“とっても明るく元気な人”たちがいっぱいいたことで、先ず足を一歩前へ。現場に飛び込んで参加する中で考えるスタイルが徐々にではあっても醸し出されています。

 思うに、スタートした時点では、坂戸市社会福祉協議会もそうでしたが、私以外の全員がパソコンボランティアを初耳状態でした。また、ボランティア自体が初めての人がほとんどで、ただ、パソコン学習会のお手伝いくらいの気持ちでの参加でした。そこにパソコンでボランティア、しかも、障害をもった人への、ときたら、全てが初めて尽くしで戸惑ったのも無理からぬところです。

 でも、去年の6月以降の入会者は、坂戸パソボラからの呼びかけ文に応えて入会した人ですので、何をしようとしているところかを認識した上での参加です。ここが以前との大きな違いです。また、今まで実際に障害をもった方々へのボランティアをする中で、パソコンも用いることの必要性を感じて入会した人たちの参加も変化をもたらしました。やりたいことがあっての参加だけに課題が既に具体的で、パソボラに参加したもののサポートの要請が無いことには動けないでいたメンバーたちにやれるテーマ、やるべきテーマを与えました。このことで、既にある障害者へのサポートがパソコンを用いることでいっそう円滑になるように主にパソコンの面から協力したり応援したりすることも坂戸パソボラの役割のひとつとなりました。

2.所属している社会環境や人生経験の違いからか持論から抜け出せないことで、例会の場が話し合いの場として成り立ち難いことがあります。

 と書いたことですが、これまた今でもあります。問題提起と結論の間の説明が、自分の中では納得しているためか省かれたまま提示される傾向があるのですね。しかも、自分の出した結論を最終的なものとして納得しているので、なかなか聞く耳を持ってもらえない、というか、別の意見をあらためて吟味してもらえない。従って、話し合いが話し合いとして成立し難い。でも、こういったことはボランティア以前という気もするし、ボランティアする中で変わってくれるだろうなどという過剰な期待を抱いてはいけないことなのかもしれません。皆様、どう思われますか。

 それと、こういったときには、相手を立てながら結論を見いだすことが必要だと思います。間違ってもケンカ別れになることがないよう気を使いたいものです。なんといってもボランティアしようと集まってきた仲間のはずなんですから。

3.メーリングリストが会の中でのコミュニケーションの主体となると、パソコン操作の慣れもあって読んではいても話し合いになかなか入っていけないことがあります。入力が困難な人にとってはメールを出すこと自体が第二のハードルとなります。互いの表情からも感じ合える例会の場を大切にすると共に、例会以外の交流の場が必要性が認識されつつあります。

 これについては、このレポートを出した翌月、早速お喋りする機会を持ちました。その中で「坂戸パソボラ」の中にチームを持つことが検討され、まだパソコンに慣れていない人の居場所となることができるチームとして「ウエルカムチーム」を発足しました。新しい人がメーリングリストに登場したらメールでもって歓迎する。これだけでパソコンの練習にもなりますしね。

 ただ、メーリングリストが活発になるということはメールがいっぱい流れるということであり、最近ではメールの爆発に読み切れないという悲鳴が上がっているのも事実です。音声で読んでいる人は飛ばし読みができませんから、いっそう大変です。メールの件名に課題別のキーワードを付けるようになったことで選択して読みたい人や急いで読みたいときの参考になってはいるのですが、それでもメールそのものが圧倒的に多いので、さらなる工夫を探っています。たとえば、チーム内での参加確認などはチーム内の同報メールで済ませるなどです。

 これに関しては、課題ごとのメーリングリストを立ち上げるという意見もあります。でもそうなるとそのメーリングリストに参加していない人には分からない情報が会の中に行き来することになります。何かいい工夫は無いでしょうか。

4.「メーリングリストでの約束事は『インターネットメールの知識』をどうぞ」と記したからといって、メーリングリストの参加者が見に行くとは限りません。自分達のWebSiteに、参照できる場を作ったほうが良さそうです。

 と書いた部分ですが、メーリングリストに新しい人が参加したときには、メーリングリストとはどういうもので、坂戸パソボラならではのローカルルールにはこんなものがあるというのを、「メーリングリストでの約束事は『インターネットメールの知識』をどうぞ」とは別に、そのつどメーリングリストで紹介していました。でも、新しい人が参加するたびに同じような内容が流れるのはわずらわしいという意見があったことで、「坂戸パソボラWeb」に参照できるページを置きました。

 ただ、それを案内したからといって、「メーリングリストの参加者が見に行くとは限りません」という状況は変わりません。新しい人が入会したら、坂戸パソホラのあらためての説明をすると共に、メーリングリストに関しても説明し質問を受ける直接の場を設けたほうがいいのかもしれないと思いつつあります。

5.役割を分担することで“誰かが頑張らなくてはいけない状況”を防ぐのはもちろんですが、それ以上に、会の中に分担できる役割を作ることで参加者意識を高めることが必要です。自分の出来る役割があることで居場所を実感し、それが責任感となってやる気に結び付くという側面はありますから。

 2番のところで述べた「ウエルカムチーム」以外にも、様々なチームを作りました。まだまだ機能しているとは言い難いところもありますが、それでも一歩前進です。ここではチーム名のみをあげます。「アクションチーム」「ウエルカムチーム」「スキルアップチーム」「PRチーム」「パソコン校正プロジェクトチーム」「デイジー図書プロジェクトチーム」「事務局チーム」の7つです。ちなみに、プロジェクトとついたものは、他のボランティアグループにパソボラが協力して進めているものや、ある程度の目鼻がついた段階で自立したボランティアグループとなることを見込んでいるものです。詳しい説明は「坂戸パソボラWeb」にありますのでご覧ください。

6.「会則」を作りたいという声があります。即すべき会の実態がまだまだなのに外枠だけカッチリ作ってしまうと、グループとしての体裁を整えたことでグループが出来上がったと安心してしまわないかと思います。むしろ、実際にパソボラする中で直面し必要を感じたことをそのつど確認し合ながら明文化していく中で、「会則」というか合意事項の集約されたものが徐々に徐々に出来上がっていくほうがいいのではと思っています。とはいえ、「坂戸パソコンボランティア」の紹介として記してきたことを箇条書きにすることで「会則」化できないこともないので、出発したばかりのグループに見合った最小限の「会則」というか、合意事項の箇条書き路線が今のところの着地点かな、とも思っています。

 と書いたその方向で、今年3月の例会で「会則」が採択されました。切っ掛けとしては、「やはり会則を」という声が再び持ち上がったその時期に、とある有名企業の社会貢献部門から「坂戸パソボラ」に対して支援したいとの声があったことです。そのことを議論する中で「会則」があることは“支援をする相手にとっての安心感”につながることが納得がいき、そういうことならむしろ「会則」が必要だと「坂戸パソボラWeb」に記してあったことを箇条書きにして「会則」化しました。作成にあたっては、会則を理解することに疲れてしまわない程度の前文+9条という短さにすると共に、中学生にも理解できる表現を心掛けました(実際に中学生に読んでもらい手直しをしました)。「会則」そのものは「坂戸パソボラWeb」にありますので、見ていただければと思います。

 なお、「会則」を採択した後でわかったことですが、3月末に坂戸市社会福祉協議会から送られてきたボランティアグループへの補助金の申請書類を見たところ、「会則」があることが補助金交付の条件となっていました。各種申請に関して必要な事項があるなら前もって知らせてほしいと質問したときには何も示されなかったにも関わらず、というのは愚痴ですが、その後、社協経由で回ってくるようになった各種助成の案内をみると、どうやら坂戸市社協に限らず補助金には会則のあることが必須のようです。つまり、助成を得たいと考えているなら「会則」の準備だけはしておいたほうがいいことになります。「坂戸パソボラ」の会則も参考にしていただければ幸いです。

 さて、前回の「一応のまとめ」の中で、「坂戸パソボラ」が、パソコン学習会を応援した、いわば“その場の勢い”で出来てしまったことで、課題に出会って初めて気づいてそれから考え始めるスタイルにならざるを得ないのが現状だと書きました。そして、こんな「坂戸」のような形でもパソボラはスタートできるんだぞという見本くらいにはなるんじゃないか・・・ということで、レポートを提出することにしたと書きました。昨年のレポートが参考になったかどうかわかりませんが、それから1年です。

 去年のレポートの2ヶ月後、埼玉県の視覚障害者団体が開催した「視覚障害者のためのパソコン教室」の応援をしました。今年は「ボランティア行事保険」に該当するようにと坂戸パソボラの主催で8月から連続講座として開催します。また、今年7月には「肢体不自由者のためのパソコン体験講座」も櫻井宏明さんを講師として開催しました。体験講座を行うことで必要としている人たちに情報を伝えるのはもちろんですが、講座での櫻井さんの講義や講座開催の準備を通してパソボラメンバーが鍛えられる機会にもなっています。加えて、こういった講座を企画したことで、障害をもった人からパソコンを教えてほしいと言われたときの「坂戸パソボラ」としての共通テキストが得られました。あらためて櫻井さんには「ありがとう」と言いたいと思います。

 あと、「坂戸パソコンボランティアの参加者が伸びているのは何ゆえ」かがまだでした。これまでも坂戸市には「ボランティア連絡会」がありました。連絡会としての機能は十分に果たしているものの、ボランティアグループの枠を超えた交流という意味ではいま一歩だったようです。具体的に言うと、視覚障害者に関わるボランティアグループとしては、点字、朗読、拡大写本、生活援助、交流援助と様々ありますが、それぞれのグループとしての関わりで終わっていて横のつながりが希薄だったそうです。障害者のためのものを作ってはいるがそこで終わっているので、実際にどう役立っているか分からないという声もありました。また、「ボランティア対象者を奪い合っている」と表現した人もいました。

 そんなとき登場したのがパソボラです。去年の「視覚障害者のためのパソコン教室」開催をきっかけに、ボランティア連絡会の中で視覚障害者に関わっているボランティアグループに見学を呼びかけたところ、色々なグループの人が教室があふれるくらい参加してくれました。そういった中から参加した人たちは坂戸パソボラのメンバーであると共にそれぞれのボランティアグループの一員でもあるわけで、坂戸パソボラの中で自分たちのグループを紹介し課題を提示し協力を要請することで、ボランティアグループの枠を超えた交流が始まっています。また、これまではボランティアグループと障害者団体という関係だったので「ほんと言うと障害者のことはよくわからん」という状態だった人もいたようですが、実際にパソボラをする中で障害をもっている人とあらためて出会うことが出来たことで、自分がそれまでもやってきたボランティア活動の意味があらためて理解できたという人もいます。色々と風通しが良くなったことを「パソボラ効果」と持ち上げられたりもしています。

 こういったことを通してパソボラに入会した人が、パソボラ以外に自分の参加しているグループの人を“パソボラで一緒に勉強することで自分たちのグループの活動をいっそうスムーズにしよう”とパソボラに誘う。これがパソボラ参加者が伸びている要因のひとつでしょう。

 もちろん、パソコンのコマーシャルがドンドン流れているこの頃ですので、パソボラとはパソコンの勉強を教えてくれるところという、期待と誤解に満ちた入会希望が無いこともありません。いや、けっこうあります。確かに坂戸パソボラは、パソコン初心者、どころかパソコンを使ったことがなくても参加できるグループですが、いずれは「助けて!から助け手へ!!」を期待しているボランティアグループです。ですから、8月から会員向けの「パソコン初心者講座」を始めますが、単なるパソコン講座ではない、「サポート入門講座」として位置付けています。

 最後に、最近「坂戸パソボラ」のメーリングリストに書いたことから。

 8月から開始するのはパソコン初心者を対象とした「サポート入門講座」なのですが、そこに参加する多くの人たちは、パソコンは初心者でもボランティアに関しては長年の経験者です。こういった障害者の情報保証にかかわるボランティアグループがあったからこそ、今の私たちもパソコンを用いた情報保証の応援ができるのです。パソボラは、パソコンという今時の道具を用いているという意味では時代の先端にいますが、ボランティアとしては生まれたばかり、まだまだ初心者です。「坂戸パソボラ」は障害をもった人へのパソコンサポートに加えて、ボランティアグループがやろうとしていることへのパソコンを通じたサポートもしておりますが、ことボランティアに関しては、これまでボランティアをしていた方々こそがパソボラのサポーターなのです。

 パソボラは「パソボラ」という特別のものではなくボランティアのひとつです。ボランティアとは、一方的にしたりリードしたりする関係でなく、ふれあい学び合い分かち合う関係です。パソコンを用いたサポートができるようになるだけではなく、ボランティアとは何かをボランティアをする中から学ぶこと。「坂戸パソコンボランティア」の今後の課題として取り組んでいきたいと思っています。

以上 

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